第10章 無意識の罪、純が故の熱情 [秀吉]
………どうしてこうなった。
目の前には政宗と光秀に囲まれて困ったように二人を見上げる檸檬。政宗は檸檬の頬に手を添え、光秀はその細い肩を抱いている。二人とも檸檬の反応を面白がり、揶揄って遊んでいる。
「……おい。いい加減にしろ。」
俺は檸檬の腕を掴み、引き寄せる。
「秀吉さん?!……ありがとうございます。」
檸檬は今、やっと俺に気がついたようだった。
「おい。邪魔すんじゃねぇ、秀吉。」
「そうだ。元はと言えばお前が妙なことを言うからだろう。」
「……?」
檸檬は不思議そうに俺を見つめる。
そう。こうなった原因は俺にあるらしい。
しかし、俺には何故"あれ"がこうなったのか分からない。
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ーーー遡ること数日
「はぁ?!檸檬の見合いだと?」
「あぁ。そうだ。」
檸檬もいい年頃だ。そろそろ見合いの話でも、と思ったんだが……。
檸檬は信長様の寵姫であり、俺の大切な妹だ。そんな檸檬の見合いとなれば相手に要求したいことは山ほどある。家柄、性格、将来性……。しかし、それ故になかなかいい相手が見つからない。それで、政宗にも助言をもらおうと思って聞いたのだが……。
「お前、それ本気で言ってんのか?……訳が分かんねぇ。」
訳がわからないのはこっちだ。
しかし、政宗の目は真剣で、その声はいつもより少し低い。
「お前、あいつが好きなんじゃなかったのかよ。」
はぁ?
「好きに決まってるだろ。少し惜しい気もするが、だからこそ、ちゃんと女としての幸せを与えてやりたいし、それで迷っているんじゃないか。」
だからこそ、政宗に相談したというのに。
「ーーーっっ!本気かよ……。信じらんねぇ。……はぁぁ……。」
政宗は呆れたように俺を見つめ、溜息を吐いた。
「……面白そうな話になっているじゃないか。」
「ーー光秀っ!お前いつからそこに居た?」
光秀はいつのまにか、俺の背後に立っていた。
「秀吉。それなら、すぐに解決するぞ。」
光秀が妖しく笑う。
「どういうことだ?」
「俺が檸檬の見合い相手になってやろう。」