第9章 月明かりの秘め事 [信長]
「信長様!おはようございます!」
檸檬は、朝から愛らしい笑顔で挨拶をしてくる。
「おはよう、檸檬。」
俺がそれに答えればさらに満面の笑みを返してくる。
俺と檸檬が恋仲となってから数週間が立つ。最初は単に面白い女、というだけの認識だった。しかし檸檬と一緒にいる中で、その健気さや強さに惹かれていった。檸檬は凍り付いていた俺の心を溶かし、第六天魔王と呼ばれたこの俺を愛していると言った。昼、声をかければ愛らしい笑顔を見せ、夜、閨へ誘えば、恥じらいながらも甘い声を上げる。
しかし最近それでは物足りなくなっている己がいた。もっと乱れ、俺を求める檸檬が見たい。そう思っていた時、俺のもとに転がり込んだ妙薬。
俺は懐から小さな瓶に入った桃色の液体を取り出した。
***
ーーーー数日前
「信長様、光秀です。」
俺が天守で傘下の大名からの文に目を通していると光秀が訪ねてきた。
「入れ。……何の用だ。」
「はっ、先日、敵国へと潜入させていたものが戻ってまいりましたのでそのご報告に。」
「そうか。」
俺は光秀からの報告を聞き、次の指示を出す。
「……で、……しろ。……は……だ。」
「はっ、承知しました。……もう一つ、信長様、面白い薬が手に入ったので差し上げます。」
そう言って光秀が取り出したのは小瓶。ガラス細工のように細やかな装飾がされており、日を受けてキラキラと光っている。その中には半透明の桃色の液体。普通の薬ではないことは容易に察しがつく。
「……なんの薬だ。」
そう問えば、光秀はニヤリと妖しく笑う。
「西洋の催淫剤です。……媚薬、ですね。」