第5章 蒼空と桔梗 [政宗] 前編
「……やっぱり元気ないよね。あ、そうだ。今日まで付き合ってくれたお礼に甘いものでもをご馳走するよ。」
「えっ!いいよ!私が好きで案内してただけだから……。」
「いや、すごく助かったから。お礼くらいさせてよ。」
そう言って佐助くんは私を近くの甘味処に連れていってくれた。
しばらくして、運ばれてきたのは美味しそうなあんみつで。
「ここのお店のあんみつが美味しいらしいって幸村が言ってた。」
「……ありがとう、佐助くん。いただきます。」
そう、お礼を言ってパクッと一口食べると程よい甘さが口の中に広がる。その甘さが心をふわっと軽くしてくれたような気がした。
「……で。どうしたの?」
やっぱり聞かれるよね。別に話したくないわけじゃない。私自身、この気持ちを一人で耐えるのに少し、辛くなっていた。佐助くんが聞いてくれるというなら聞いてほしい。でも、こんなこと話して佐助くんを困らせたりしないだろうか。
「大丈夫。俺はいつでも君の味方だよ。」
佐助くんの優しさが心に染みる。
「……あのね、……。」
私は思い切って、佐助くんに心の中にある悩みを打ち明けた。少し辛い記憶や想いもあるけれど、言葉にして聞いてもらうだけで心の中のまだかまりが解けていくような、そんな気持ちになる。
佐助くんは全て聴き終わった後、
「俺がいうのもあれなんだけど、言葉にすればいいんじゃないかな。諦めるのはそれからでも遅くない。どうせ、言わなきゃ諦められないんじゃない?もし、それでうまくいかなかったら、また、俺がどこかへ連れ出してあげる。だから頑張れ。」
佐助くんの言葉は不思議なほどに自分の心に馴染んだ。言わなきゃ伝わらないし、自分も諦められない。
ならいっそ、告げてしまえばいい。
そうしないと、多分、前には進めないから。
「ありがとう。」
そう言うと、佐助くんは私の頭を撫でてくれた。
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