第5章 蒼空と桔梗 [政宗] 前編
桜が散って葉桜が青々とした木陰を作り
木々の葉はそよ風に揺られ、木漏れ日は踊る
どこまでも透き通った青空は
私を捉えて、どこまでも堕としていく
手を伸ばせば届くのかな
あの深い蒼色に
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ーーー安土城
「おはよう、政宗、家康!」
私は朝餉を取るために広間へと向かう。毎朝の同じ光景。最初こそ慣れないことばかりで少し怖かったけれど、今はこの安土城が自分の居場所だって思える。
「おう、おはよ、檸檬。」
「……おはよう。」
政宗も家康も挨拶をすれば返してくれるし、会えば話しかけてくれるくらいにまで仲良くなることができた。政宗なんかは最初会った時、刀を向けられて本当に怖かったことを覚えている。
でも、今では……私の好きな人。
傍若無人な性格だけど、ちゃんと周りも、自分の土地の人のこともしっかり考えてる。思いやりがあって、強い信念があって。そんな政宗に惹かれるのに時間はかからなかった。
でも最近少し悩み事がある。
それは……
「檸檬、ちゃんと食べてるか?」
少し考え事してたら箸が止まっちゃってたみたい。秀吉さんに声をかけられる。
「あ、ほら、ご飯粒ついてるぞ。」
秀吉さんが口元を指差す。
(えっ?!……恥ずかしい……)
慌てて取ろうと口元を触る。
(どこ……?)
その時
ちゅっ
「ーーーっっ!!」
「取れたぞ」
政宗に、頬を舐められた?!
しかも唇のすぐそば。
「政宗っ!なんでこんなことするの!普通にとってよ……。」
「取れたんだからいいだろ。細けぇことは気にすんなって。」
……そう、これが最近の私の悩み。
政宗のスキンシップ?が激しすぎる。
普通なら、好きな人にこんなことされたら胸がときめかないわけがない。でも、政宗はちょっと違う。どこか、刹那的な生き方をしていて、今みたいな行動にも深い意味はなかったりする。
だからこそ…つらい。
私ばかりがドキドキしていて、この気持ちはきっと通じることはない。
長い間一緒にいる中でそのことがわかってきた。
だから、期待しないように、
これ以上
好きにならないように。
そうしたいのに、できない。
これが最近の私の悩み。