• テキストサイズ

[イケメン戦国]恋唄*いろはで紡ぐ恋と蜜*

第3章 桜が秘めた恋心 [家康] 前編






「いやっ……!!」


振りかざされた刀に逃げることもできず

ただ襲ってくるであろう痛みを覚悟する。

ぎゅっと閉じた瞼の裏に浮かぶのは
ぶっきらぼうで綺麗な翠の瞳。

助けてと声を上げることもできないけれど
ただひたすらに貴方を想う。


「覚悟……!!」
















え……?








振り下ろされるはずの刀は身体に当たらず

予期した痛みもない



その代わりに





目の前を覆った鮮やかな黄色の着物と

藍色の空に飛び散った赤。


「……あんた達誰に手出したか分かってる?」


焦りの中にも怒りをにじませた声で目の前の彼は言う。
そして、黄色の着物と髪は鮮やかに舞い、次々と敵の兵を薙ぎ倒す。

「はぁっ……はっ……」


目の前の彼は息を荒げて刀を振りかざす。
それでも、その手から、足から力が抜けることはない。

言葉を発することもできず息を張り詰めてその光景を見つめる。

「はぁっっ……」

最後の一人、彼は刀を振りかざす。


ばさっ





目の前にいた敵の兵は一人残らず薙ぎ倒され、誰一人として動くことはない。

あまりの出来事に呆気にとられる。

聞こえるのは彼の苦しそうな吐息だけ。

赤く濡れた金色の髪が月明かりに輝く。





「いえや………っ!」

どさっ




やっとの事で声を絞り出す。
しかし私が彼の名を呼ぶ前に視界から彼が消えた。


「家康……!家康!」

倒れた家康に駆け寄ると家康の体からはとめどなく血が流れてくる。



さっきの戦いで家康は敵の刀を受けていないはず


だとしたら……











「……どうして庇ってくれたの?」


家康が刀を受けたとしたら、それは私の前に立ちはだかった時。
私なんかより、家康の体の方が大事なのに……。

私がどうしていいかわからず泣きそうになっていると、


「……勘違い、しな…いで。あんたを助けたのは…信長様の…お気に入り、だから。あんた、みたいな弱いやつ……本当、は……うっ、ぁっっ!」

「家康!!」

「はぁっ、はぁっっ」

家康は浅い呼吸を繰り返す。

このままだと本当に命が危ないかもしれない。
そう思いながらもどうしていいかわからず混乱する。


「だれか……。誰か!!!!助けて!!!」
/ 366ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp