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[イケメン戦国]恋唄*いろはで紡ぐ恋と蜜*

第20章 《信長生誕記念》涙色の契り



皐月十二日、今宵安土城では賑やかな宴が開かれていた。

他の宴とは一線を画すほどに盛大に執り行われているその宴は、この城の主であり、同時にこの日ノ本の覇者である一人の男の生誕を祝うものであった。日々側近として側に仕える者だけでなく、日ノ本全土から集められた有力大名達、そしてその家来に至るまで大勢の笑いと喧騒に包まれたそんな一夜の物語。

******

「なんで……?」

私は今、目の前の光景を信じられずにいる。
今宵は信長様の誕生日。皆がその生誕を祝うために、ここ安土城に集った。しかし、この異様な雰囲気はなんだ。

普段なら、信長様の周りには秀吉さんや光秀さん、政宗や家康を除いてどんな有力大名もめったに近づかない。しかし、今宵信長様を取り囲むのはきらびやかな衣装に身を包み、華やかな化粧を施した美しい女性たち。まるで信長様に媚びるようにその肩に手を置き、傍らに寄り添う。

常では考えられないその光景に驚きを隠せない。信長様もその人たちをあしらうわけでもなく、ただただ光秀さんたちとお酒を飲みかわし、宴を進めていく。

その信長様の態度に私の中の疑問符はさらに増えていった。

そんな時、ふと耳を掠めた会話。

宴の喧騒の中で、妙にはっきりと聞こえたその言葉は、私の心を一瞬にしてかき乱す。


『今宵はやけに女人が多いようですなぁ。』
『おや、ご存じないので?彼の天下人、織田信長様がとうとう正室を娶りなさるとおっしゃったそうで。地方の大名は我先にと娘に信長様のご機嫌取りをさせているようですな。』
『ほぅ、あの信長様が正室を?確かにこの先、織田家の繁栄を盤石にするためには信長様にもご子息を設けていただかなくてはなりませんからな。』
『違いない。わっはっは。』


そのあとの会話は再び喧騒の向こうへと溶け込んでいった。

ドクドクと嫌な音を立てて騒ぎ出す心臓。もしも本当なら。ううん、ただの噂かもしれない。そんな正解のわからない問いがぐるぐると頭の中を駆け巡る。

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