第9章 零部・過去
『血遁』
「まさかお前…俺の一族の血も…」
『爆血の華』
-ぶしゃぁあっ-
跡形の無い肉塊となって部屋中に飛び散る。噴水の様な血飛沫を浴び水遁で血を洗い流すと部屋を出て、すれ違う男の使用人を無差別で殺して行く。
やがて、とある部屋まで来ると静かに襖を開ける。まだ幼子の弟妹が寝てる部屋。そっと二人を抱き抱えると静かにその場から姿を消す。
-ちゃぷん-
と海の上に佇むのはチヅル。背と胸に抱っこ紐で弟妹を括り付け見つめる先は乱宮島。印を素早く結んで水面に手を浸けると四方八方から島を取り囲む様に巨大な津波が発生し容赦無く島を飲み込む。飲み込まれた島は深く海底へ沈み大きな渦潮を発生させる。
渦潮が消えるまで黙ってその様子を眺め全てが消えた穏やかな水面を確認すると背を向けて歩き出した。
※※※
どのくらいの時間、こんなに至近距離で見つめ合っていたのだろう。多分そんなに長い時間では無い…けどその時間が酷く永く感じた。
-すぅ…-
風車の様な模様が三つ巴の模様に戻って本来の漆黒の瞳に戻る。暫しそのまま見つめ合った後、苦しそうに目を伏せるから医療忍術を施した手でそっと瞼を覆う。
「!」
『その目…あまり使わない方がいい』
「チヅル」
『?』
瞼を覆っていた手をやんわりと掴まれ退けられると漆黒の双眼と目が合う。
「お前の事を知る為に必要だった」
『!?』
-バッ-
力任せに手を振りほどいて距離を取る。その言葉の意味を一瞬で理解した。
『………見たの?』
「…あぁ」
『そっか…そうだよね。写輪眼だと記憶を見るくらい容易いか』
「お前相手だと万華鏡じゃないと出来ないがな」
どうする?穢れたアタシを見られた知られた…口止めに殺す?イタチさん相手でも相討ちくらいには持って行けるハズ………否、駄目だ。此処でアタシが死んだら弟妹はどうするの。どうしよう、どうすればいい?考えれば考える程、身体が小刻みに震え出す。
「俺だったら…自害している」
『…は?』
「逃げる事も見捨てる事も出来る…だがお前はそれをしなかった。充分立派だ」
→to be continued.