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氷華血鎖【鳴門】

第8章 零部・心


ミツと呼ばれた男にジロリと睨み付けられる。
この男は確か…山賊に追われ瀕死だったところをチヅルが助けた男か。どうも俺に対して敵意が剥き出しなところを見るとチヅルに気があるのだろう。



「チヅ…そいつは…」

『ん?イタチさんだよ。あの時ミツさんの治療をしたのはアタシだけど山賊を追い払ってくれたのはイタチさん』

「むぅ…その説は…お世話になりました…」



苦虫を噛み潰した様な顔でそっぽを向きながら言う様子にチヅルは小さく肩を竦めると洗い物で濡れた手を手拭で拭きながら男に近付き落とした荷物を拾う。



『今日のお土産はお団子なのね!有難う』

「えっ!?あ…あぁ…その…朝早くからお袋に使いっ走りにされて…その、ついでにな!」

「………」



嘘、だな。
チヅルの為にと言うのがもう滲み出ている。それを知ってか知らずかチヅルは有難うと微笑む………様子からして前者か。





※※※





朝食の片付けを終えた後、チヅルは村にある家を一軒一軒回る。若者は少なく、居ても街まで住み込みで働いてる者が多く、お年寄りが多いこの村の医者として診たり薬を調合したり。
それを終えて戻って来るのが昼頃で弟妹に昼食を摂らせた後に洗濯や掃除等の家事をする。そしてそれも終えると森の奥に行く。森が開けると全体を一望出来る広い原っぱがあり、そこに一つのビニールハウスがあった。



「これは…」

『アタシ自身で遺伝子組み換えをした薬草の栽培場よ』

「庭の薬草とは別なのか?」

『うん、別。こっちは危険』

「危険?」

『薬草だけど毒草でもある』



だから此処は結界を張ってる、と言いながら水遁を用いて薬草に水をあげる。その姿は何処からどう見ても草花を愛でる少女。いつも思ってしまうのだが一体どうして島を沈める様な事をしたのだろうか。同郷出身であった十蔵も知らないと言っていた。



「娯楽島…」

『!』



ビクリとチヅルの肩が揺れた。



「………どういった島か聞いても良いか?」

『………』



聞かない方が良かったのか。動揺するようにチャクラが乱れる…かと思えば一瞬で平常に戻る。



『昨夜』

「?」

『目の事話したでしょ?』

「あぁ」

『理由は…それ』



目が理由?
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