第3章 手紙
ーMsideー
朝から翔とニノの様子がおかしくて。
ニノのいないタイミングで翔に聞いたら、呼び出しのことを教えてくれた。
あっさり教えてくれたのは俺がファンレターのことを知ってるからだろう。
翔がいるのにニノに告白しようとするやつがいるとは思わなかったから驚いた。
翔は心底行かせたくなさそうだったが、青い顔してそれでも行くと言うニノに寄り添うようにして教室を出て行った。
翔が一緒だから何もないだろうし、俺が居たって何が出来るわけでもないんだけど、どうにも気になって。
放課後の予定をキャンセルして教室に残った。
智もニノから聞いたんだろう。
ニノたちを見送ってから、ずっと落ち着きなくウロウロしてる。
ニノのこと本当に心配なんだな。
···本当に、好きなんだな。
当然のように翔が付いていったけど、智だって付き添いたかったんじゃないのかな。
あまりにも智がソワソワしてるから、悪趣味だとは思ったけどこっそり様子を見に行くことにした。
裏庭に行ってみたら翔たちが手を繋いでるもんだから、笑いが止まらなくなって智に怒られたが。
バレることなく見届けられた。
結局ニノへの告白はなかった。
相手からしてみたら、勇気を出してニノを呼び出したのに、翔まで付いてくるわ、しかも手繋いで現れるわで出鼻を挫かれただろうし。
相当翔が怖かったんだろうと思う。
俺の位置からは翔の顔は見えなかったが、先輩の表情から想像することは出来た。
何も言えずトボトボと去って行く先輩には御愁傷様としか言いようがなかった。
智も相手を気の毒だとは思っているようだが、ニノに何もなくて安心したようだ。
ホッとした顔でニコニコしていて。
「智ってさ···」
本当にニノのこと好きだよな···
うっかり口が滑りそうになって慌てて飲み込む。
別に言っても問題はないかもしれないけど。
智がどう受け取るか分からないから、もしかしたら嫌な気分にさせるかもしれないし。
適当に言葉を濁したが、智は特に気にした様子もなかった。