第3章 手紙
仲良くなってからのカズは日に日に可愛さを増していて。
元々めちゃくちゃ可愛いのに、さらに可愛くなるって一体どういうことなんだろうか。
最初は俺が今までよりずっと近くに居られるようになったからそう思うだけかな~なんて呑気に考えていたけど。
どうやら俺だけじゃなく、みんな同じようにカズの可愛さ増し増しを感じているらしい。
この1週間、後を絶たないカズへの手紙。
丸山以外にも、カズを狙ってるやつはまだまだ山ほどいるってことがよく分かる。
今のところ届くのはラブレターというよりはファンレターだけど、カズは意味が分からないと困惑している。
どれも差出人不明なのも、不気味に感じてるみたいだ。
下駄箱に入った手紙を見つける度に落ち込んでしまう。
カズの可愛さを叫びたくなる気持ちは分からなくもないけれど、そのせいでカズを怯えさせるなんて。
差出人さえ分かれば怒りに任せて文句を言いに行くのに。
ぶつけどころのない憤りを飲み込んで、カズの頭にそっと触れる。
落ち込むカズを励ますように、柔らかい髪を梳くように撫でると少しだけ顔を上げた。
上目遣いで俺を見つめると
「ごめんね、翔ちゃん。毎日こんなワケわかんないもの一緒に読ませて···」
しょんぼりとした声で謝ってくれる。
俺はウルウルの可愛い瞳にドキドキしてしまうのを隠すのに必死だ。
「気にしないで。こんなものをカズ1人に読ませるなんて俺がしたくないだけだから」
頭に手をのせたまま安心させるように笑い掛けたら、瞳のウルウルが増した気がした。
「ありがと。翔ちゃんが一緒にいてくれるから、ほんとに心強いんだよ」
少し笑顔が出たカズを見てホッとする。
いつだってカズには笑顔でいてほしい。
微笑み返すと、ますます可愛く笑ってくれる。
嬉しくなってまた髪を撫で始めると、カズは気持ち良さそうに目を細めた。
猫みたいだなんて思いながら、しばらくカズの頭を撫で続けた。