第3章 手紙
ーSsideー
あの日から毎日カズの隣にいる。
丸山は約束通り誰にも何も話していないようだし、カズに近付いて来ることもない。
俺の知ってる丸山は真面目で優しいやつだ。
あれは、本当にカズのことが好きで、好きすぎてテンパって訳分からなくなっての行動だったんじゃないかなって。
少し時間が経ってそんな風に思えるくらいには冷静になった気がする。
だからって絶対許されることではないし、丸山への怒りは消えない。
丸山を見かけるだけで怯えるカズを見る度に、今でもぶん殴ってやりたいと思う。
でもカズはそんなこと望んでないだろうとも思う。
そんなことをしたって、カズが必死に忘れようとしていることを蒸し返すだけだ。
俺に出来るのはただ寄り添うことだけ。
無力な自分が情けなくなったりもするけれど、そんな俺にカズは笑顔を見せてくれる。
カズが俺の隣で安心しきった顔で笑ってくれることが本当に嬉しい。
ずっと見ているだけだったカズと毎日一緒に過ごせることが幸せでたまらないんだ。
この笑顔をずっと守っていきたい。
でも、時々ふと考えてしまう。
実は俺もカズのことが好きで
守りたいって気持ちだけじゃなくて、下心もあって側にいるんだって
カズが知ったらどう思うんだろう···って。
引くだろうか。
それとも裏切られたと傷付くだろうか。
失望されて···
それで離れていってしまうかな。
カズを傷付けるのも、カズが離れてしまうのも
そんなの嫌だ。
俺を信頼してくれているカズのためにも
そして友だちとしてで構わないからずっと側にいるためにも、俺の気持ちは隠し通さないと。
それにしても···
机に突っ伏してしまったカズを見つめる。
丸山のことは時間がカズの心の傷を癒してくれるのを待つしかないとしても。
今現在カズが落ち込んでいる原因である目の前の手紙を、カズに気付かれないようにクシャリと握り潰した。