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先生とわたしの恋物語

第7章 旅行


旅館に戻った。ふたりで入れる温泉を先生はなんと予約していて。

夕食前にいっしょに入った。



「わぁ……気持ち良さそう」

温泉から湯気が白くのぼる。檜の匂いと塩の香りがして。海のほうから砂を削る波の音聞こえる。

「あーー……気持ちいい」

バーーーっと身体を洗って足から湯船に浸かった。熱く白く濁ったお湯が心地よい。効能は肩こりやらニキビやら色々だ。

「最高な絶景だな」

田中先生も身体を洗ったあと、ゆっくり温泉に浸かった。髪が濡れた先生は息を呑むほどの美しさで。見惚れていた。

「星、綺麗だな……」
「そうですね」

わたしは先生のとなりに寄って景色を眺めた。真っ暗で広大な海と都会では見れない絶景の無数の星が散らばる夜空。三日月が柔らかく輝く。



「市川と旅行は、もう行けないかもな……」

小さく呟いた。「…せんせい……」

「……仕方ない話だけどな」

わたしを見つめる田中先生は切なげで。わたしは胸を締め付けられて。

でも気の利いた言葉が出てこない。

「そう…ですね。親には友達と出かけてるって言えば……」

自信なさげな声はだんだん小さくなった。そんな嘘を、田中先生はつかない……だろう。今回の旅行も先生にとっては……。



「市川、おいで」

手を伸ばした先生は、わたしを引き寄せて、抱きしめた。温かい心音が響いていた。「せんせ…?」

そう聞いても
すぐに返事は返らなくて。






「……ありがとな。俺のワガママに付き合ってくれて」



「え?!そんな、むしろわたしは」嬉しかったです」そう伝えたかった。「ありがとうございますと」と感謝も伝えたかった。



頬に添えた温かい手のひらに
ぬくもりを感じて、わたしは目をつぶった。

柔らかな唇がふれて、わたしは瞳を閉じた。とても愛しくて心地よくて。離れたくない。ずっとこのまま2人でいたい……。そんな淡い想いが膨らんだ。




「好きです…せんせい…」

「… 健斗、だろ?」

「ふふ、健斗さん…好きです……」

目尻を下げたのに頬に涙がつたった。先生との関係は続かないって、わたしは知っているから。涙が田中先生に気づかれないようにと、甘いキスをしながら、小さく願った。


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