第115章 番外１※

「･･･っん、ぅ･･･」

･･･長いキス。
苦しいけど、離れたくなくて。

冷えている彼の背中に腕を回すと、キュッと小さく力を入れた。

彼は私の肩や体に残った小さな傷を気にするけれど、それは私も同じ事で。

彼の体にも細かな傷が刻まれている。
その1つ1つが、全て危険なことから生まれていくものなのだろう。

私がいない所ではきっと、かなりの無茶をしていて。
･･･いや、見ていても無茶はしていたな、と薄ら開けていた瞼を閉じた時だった。

背中に回していた手の指先に、彼の背中にある傷が、ふと触れた。

それが気になり、ツ･･･と、なぞるように指を添わせた瞬間。

「ッ･･･！」
「！」

唇は勢いよく瞬時に剥がされ、同時に体も大きく離れた。

目を大きく見開き、どうしたのかと彼を見つめたが。
それは彼も同じだった。

珍しく驚いた表情に、本心を隠すかのように口元を手で覆い隠す彼に、つい動きが止まってしまって。

「い、痛かった･･･？」

私が彼の背中の傷をなぞったせいだ、と思った。
結果、それは間違ってはいなかったのだけど。

「いや･･･」

歯切れの悪い返事に、小首を傾げて。
段々と赤くなる彼の顔を見ていると、その角度は更に増してしまった。

「どうしたの･･･？」

何かいけない事をしてしまったようだ。

段々と焦りのようなものを感じさせる彼に、こちらも少し動揺してきてしまって。

「･･･何でもない」

目を伏せ、本当に何も無かったことにさせる様に、再び唇を塞いでこようとしたけれど。

それを咄嗟に手で蓋をし拒むと、ジッと彼の目を見つめた。

「教えてくれなきゃ･･･やだ･･･」

痛かったのでなければ、何だったのか。
これでは気になって仕方がない。

そう唇を尖らせながら目でも訴えると、彼の目が降参だと伝えてきて。

それを確認し、そっと塞いでいた手を離すと、彼は大きくため息を吐くと共に、私の肩に顔を埋めるようにしてグッと体重をかけた。