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幸運と悪魔を宿すグリモワールを持つ少年たちの妹ちゃん

第1章 グリモワール授与式前


「……本当にいいの?」

子供たちはもう寝た時刻。私は1人外で夜風に涼んでいた。不意にかけられた言葉に、私は振り返ることなく頷いた。

「……寄付金のことなら気にしなくてもいいのよ?」

私の隣に座るシスターに私は微笑んだ。その言葉が、心根のいいシスターの優しい嘘だということは分かっていた。ここの教会は、神父様含め、本当にいい人たちばかりだ。年々増えていく孤児を見つけては彼らに手を差し伸べている。しかし、寄付金で成り立っている教会の経済状況は厳しいもので、建物の状態も酷く、修繕費もないので放置という状態。私は口を開いた。

「将来、特にしたいこともありませんから。それに、その人お金持ちなんですよね? 美味しいものいっぱい食べたり、お洋服を買ったりも出来るじゃないですか!」

私の言葉に悲しげな顔をするシスター。私の頭をそっと撫でる。

「……あなたにそんな負担を強いるなんてしたくないの。神父様も同じお気持ちなのよ? いつでもお断りすることはできるから……ちゃんと考えて。…結婚したら…アスタやユノとも中々会えなくなるんだから」

「……分かってます」

だが、私の心は決まっている。私は彼女に微笑んだ。

「大丈夫です。アスタもユノ兄も、ちゃんと自分の道を歩いていますから」

「…好きでもない人との結婚が、あなたの道なの?」

シスターの返しに私は微笑んだ。YesともNoとも言わず、私は立ち上がった。

「…戻りましょう。明日は忙しいですから」

明日は、グリモワール授与式。そして、私が結婚するために、この村を離れる日でもある。
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