【BLEACH】Breath In Me【原作沿い女主】
第4章 Reunion
「破道の三十一、しゃ……」
おそらくは、虚の関心が俺に向いている間に、死神がよく使うという鬼道とやらを奴にぶりかまそうとしたんだろう。だけど、そのための呪詛を最後まで唱えることはかなわなかった。
バキィッ!!
狭い道路だと言うのにお構いなしに振るわれた虚の右腕が、ルキアの身体を正面から叩き飛ばした。めき、と言う嫌な音と共に、力の抜けたルキアの身体がアスファルトを勢いよく滑走していく。俺はたまらず叫んだ。
「ルキア!!」
『今の話が聞こえなかったのか? 小娘』
虚が問う。しかし、煙が上がるほど激しく地面を滑らされたルキアは、今の一瞬でもう傷だらけだ。息を荒げ地面から少しだけ頭を持ち上げることくらいしかできなかった。
『もう一度言うぞ。お前たちでは私には勝てぬ』
ぶお、と音を立てて振り上げられた丸太のような腕が、横たわったルキアの身体の上に影を作る。
「やめろ!!」
あんな馬鹿でかい物が振り下ろされたら……そう思うとざっと血の気が引き、悲鳴を上げる身体にむち打って駆けだした。ルキアを庇うように正面に立ち、刀を構える。けれど、それは所詮形だけの行為だった。痛みと疲労に腕が震えて、刀を取り落とさないようにするのが精一杯だ。
『まだ刃向かうか? 勇敢を通り越していささか無謀だぞ、死神』
「うるせえ……!」
虚の勝ち誇ったような言葉に、苦し紛れに悪態をつく。けど、正直あんな塔みたいな腕を、この細っこい刀で受け止められる自信なんてほとんどなかった。
けど、そんなことをいちいち気にしてる暇なんてねえ。
自信が何だ。そんなもんなくても、止めるもんは止めるんだ!
『キヒヒヒヒ、仕舞いだ死神! ……安心せい。殺した後はその身体、余さず綺麗に喰ろうてやるわ!!』
虚の腕が周りの空気を轟音と共に巻き込みながら、鋭く振り下ろされる。ルキアのよせ、逃げろ、と言う切羽詰まった声が聞こえた気がしたが、無視した。左足を引き、下半身を安定させて、刀身を両手で支えるようにして前に突き出す。
止めてやる。不安と恐怖を精一杯に押し殺して、そう覚悟していた。
――が、結局、虚の腕が俺の身体を粉微塵にすることも、俺の刀が見事虚の腕を受け止めきることもなかった。