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こっちを見て

第1章 1




お願いだから、お願いだから





俺のこと、見てよ。




―――――――――――――――



俺は君に出会ったときから。
君の事だけ見てきた。

でも君の視線の先にいるのは…


「太輔ぇ…もう、見てるの辛いよぉ…」


泣きながら俺に縋り付く。
そのの好きな人は、の幼馴染。
幼馴染に彼女が出来て、家が近いから二人が家に入っていったり、
家の前でキスしたり、そういうのが見えるらしい。

今までも、何度も俺のところに来ては泣きついているが…
俺が何を言ってもの耳には届かないらしい。

「もうそいつのこと考えるのやめろよ…」
「そんなこといわれたってすきなんだもん!」

グスッ、と鼻をすする音がする。
あーあ、服に鼻水ついたかなぁ…

最初はもちろん心配もしたが、何度もこれが続くとあしらい方に慣れが出てくる。
こいつはいつになったら、幼馴染の事を諦められるんだろうか。
こんな近くに、いい男がいるっていうのに…

「他に男なんていっぱいいるって」
「他の男じゃダメなの!アイツじゃなきゃ…」

はぁ、毎回返事は決まってそうだ。
もう…


「…ッなんでだよ!」


俺が大きな声を出すと、はビクッと肩を震わせた。
目を思いっきり見開き、俺を見る。
びっくりして一瞬のうちに涙は止まったようだ。


「たい…すけ…?」



「お願いだから…お願いだから…



他の男じゃなくて、俺を見て。


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