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最愛 【黒子のバスケ】

第4章 揺れる心


青峰さんと黄瀬君はきっと仲良しで、でもゆっくりお話しできることって少ないだろうから短い時間だけどあたしに気を遣わずに二人でゆっくりしてほしかった。

休憩スペースで休んでから、飲み物でも買おうと自販機の前まで来ると、さっきのメイクさんが他のスタッフさんと話しているのが聞こえた。

「今日せっかく黄瀬君と同じスタジオだったから話したくてー、朝一で今日使わないブラシを1本A1に置いてきたんだけど、外注のメイクに拾われて作戦失敗だったんだよねー」

「でもキセリョって彼女いるって噂じゃん?それに青峰大輝のメイクだったんでしょ?なんか聞き出せなかったの?」

「それがさ、全然会話は弾まなかったんだけど、ああいうタイプもかなり好き!なんかさ、すごい“男”って感じ!それに彼女いてもメイクとして近付ければチャンスあるよ」

………

え…何この会話
しかも大声

聞かれても構わないってこと⁉

この人たちプロじゃないの?
話したいからブラシ落とすって…道具をなんだと思ってるんだろう…



アメリカでパットにずっと言われていたことがあってそれをずっとずっと守ってきた。

『ねぇちょっと?……あなた疲れてる?』

『少し…』

『でもこの子たちはねあなたの何倍も疲れてるの。手入れだけは毎日必ずやりなさい』

パットはブラシやコスメを“この子たち”と呼ぶ
最初は意味が分からなくてただ手入れをしてたけど毎日やると分かることがある
ブラシやパレットにも表情がある
使う人間に愛されてると感じる道具はいざという時に必ず味方をしてくれて思い通りのラインを描き出してくれる。
だからどんなに疲れている時でも体調がすぐれないときでも手入れだけはきちんとやってきた


盗み聞きしたあたしも悪いけどこんなところで大声で話さないでほしかった。

それに黄瀬君を狙ってるようだけど…

美緒のほうが仕事も一生懸命だし黄瀬君に似合ってるもん‼
黄瀬君だって美緒が大好きなんだから‼

あたしが反発したってどうしようもないのにこの気持ちは隠せなかった


それに青峰さんも…やっぱりモテるんだ…



腕時計に目を落とすとそろそろ戻らないといけない時間でばれないようにそっと体の向きを変えて黄瀬君の部屋に戻って青峰さんを黄瀬君と見送った



かっこよかったな…
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