第7章 近づく距離
夢中になってテレビを見てる黒須を邪魔しちゃ悪りぃような気がして、チラチラ黒須を見ながら一緒に見てると、見るからに機嫌の悪いモデルにメイクをしているところが映し出された。
明らかに機嫌の悪いモデルをうまくいなして最後には笑顔まで引き出した黒須はさすがの一言だった。
「初日は大変だったな…」
その時の事を思い出してんのか小さく呟きながら、それでも少し笑う黒須の表情は仕事の前に見た硬い表情とは真逆だった。
「次はもっと周り見てやらないと…」
「あ、ここ…200番のブラシのがよかったかも…ん?あ、でも…や、200だ」
「え…なんでこのカラー出てるんだろう…使ってないのに」
テレビを見ながら、俺の存在なんか忘れたかのようにぶつぶつと呟いて一人で反省会して、マジで仕事一筋って感じがする。
テレビに夢中で放っておかれてる感はすげーあるけど、一人反省会は大事だから邪魔できねぇ。
俺もやるし、チームの奴もやってる奴が多いけど、自分を客観的に見るってのはうまくなる上で絶対ぇ欠かせねぇ。
最後にBOSSらしき人と黒須がすげーしっかりハグしてる映像が写って、ちょっとした嫉妬心が芽生えた
いくら中身は女でBOSSとはいえ男は男だろ。あんな嬉しそうに飛び込むのを見たら嫉妬もする。
BOSSだってすげぇいい顔で褒めてんのに、それでもギリギリだったって言うなら黒須の仕事に対する基準はめちゃくちゃシビア。
仕事では容赦ねぇってのは本当っぽいな
「お疲れ」
ホントは会ってすぐにでもハグしたかったけど、俺の勘違いのせいでできなかったから、テレビを見終わって小せぇ体を大きく伸ばした黒須に手を広げたら、一瞬ビックリしたような顔をしたけどすぐにふにゃっと笑って俺にハグをしてくれた。
そもそもハグができなかったのは黒須が変な誤爆したからだ。
責任取ってちょっと長めにさせろ
火神を好きなんじゃなくてホッとしたってのが一番デカいけど、仕事を終わらせていい顔してる黒須を見たら自然と腕に力が入った