第2章 対面
キッドの船では、瀕死のユージンがたちまち回復し、気を取り直して、今度こそ菜月の捜索に乗り出した。
使うのは、先ほどとは違う水晶玉。
またか、とキッドが嫌そうな顔をするが、ユージンはそれだけでなく、懐から丁寧に包まれたある物を取り出す。
「それは?」
キラーが問う。
ユージンは、視線をキラーの仮面にぶつけ、すぐにそらす。
今度はキッドの顔をじっと見て、言おうか言うまいか迷っているように見えた。
だが、キッドのとっとと言えという言葉に、実に言いづらそうに答えるのだった。
「怒らないって約束できるなら、言ってあげてもいい」
「ほう、俺が怒るようなものなのか?」
「・・・キッド君は部屋から出てってよ。怒るんだろう?」
「・・・ちっ。わかった。怒らねぇから、さっさと言って、探し出せ」
どうやら、キッドの怒りを買うようなものを使って菜月を探すようだ。
ここでまず、ユージンが何を使おうが彼に対して怒りを表さないことを約束しないと、キッドは菜月の捜索に関与することができなくなりそうだ。
それは、避けなければならない。
だから、仕方なくユージンの条件を飲むのだった。
「本当に怒らない?」
「俺はそんなに気が長くねぇンだが?」
疑い深いユージンの態度がイラつかせる。
キラーも、まぁまぁとキッドを宥めて、ユージンにさっさとしてくれと頼みこんだ。
すると、ユージンは紙に包まれた黒くて長めの糸を取り出す。
「ナツの髪の毛だよ」
「っ!!てめ、」
髪の毛とはいえ、菜月の一部をユージンが持っていたことに、一気に怒りがわき始めるキッドだが、キラーに制されてユージンを殴るどころか近づくこともできない。
「落ち着け、キッド。約束を破ったら探せなくなる」
「くそ!」
「大丈夫だよ、ボクそこまで変態じゃないし」
「ふん、どうだか?」
ユージンが冗談で言う菜月のスリーサイズや感じるポイント発言を何度か聞いているキッドにとっては、まるで説得力のないセリフだった。
ユージンはその髪の毛を水晶玉にかざす。不思議な光があふれ出し、その髪の毛は水晶玉の中へ溶け込んでいく。
「・・・どんな仕組みだ・・・」
ヒートとワイヤーが顔を見合わせた。