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彼と彼女の航海日誌

第1章 捜索


 「僕の願望に、熱い言葉で応えてくれて嬉しいよ」
 「・・・・・・、」
 「まぁ、僕の願望なんだけどね!かっこいいセリフ言ってたけれど、所詮は、僕の願望を見てのセリフさ!
それなのに、キッドくんてば、嬉しいこと言ってくれちゃって、ナツにも聞かせてあげたいね~、うん、是非とも聞かせるべきだったね~願望なのにねぇ~」
 「・・・・・・・・・・・・、」

ユージンは嬉々として、キッドに感動したと言っている。
願望という言葉を、じつこいほど強調するたびに、キッドに恥辱心がうまれる。
そして、ユージンは知らない。
キッドが、はめられた悔しさと、恥ずかしさと、願望とはいえ菜月をその腕に抱きしめた映像を見せられた怒りによって、プルプルと震えていることを・・・。

 「じゃぁ、さっそく、キッド君のあつーい言葉にお応えして・・・ナツの捜索、はーじめるよー☆・・・って、あれ?」

気持ちを切り替えて、いそいそと菜月を探そうと意気込むユージンに、キッドの怒りが爆発した。

いつの間にかキッドの能力が発動し、決して広くはない部屋いっぱいに武器が集まっていた。

そしてその矛先は当然、ユージンだ。
この状態にしてやっと、今度は自分が絶体絶命の危機に直面していることを理解する。

他の船員は、もうキッドを止めることなどできそうもなかった。

ギラリと光るキッドの眼には、殺意が芽生えていることが、はっきりと分かったからだ。

 「死ね、ペテン師!」
 「わー!待って待って!助けて!ナツー!!」
 「手前ぇ、気安く俺の女の名を呼ぶなー!」
 「うぎゃー!!」

海の上は至って平和だった。
ある男が、この船の船長をからかわなければ。
平和だったのだ。
滅茶苦茶になった室内を見て、キラーはため息をついた。
眼下には、ピクピクと瀕死状態のユージンが転がっていた。
そして、ヒートやワイヤーをはじめ、他の船員にも伝えるのだった。
島に着いたら、船の修理をまず行おうと。
そして、死に物狂いで、菜月と言う女性を探すのだと。

 「見つけ出さないと、厄介なことになるな」

ヒートが苦笑交じりに言うと、キラーは違いないと答えるのだった。
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