第5章 交換条件
「あの・・・シャンクスさん・・・船内の片付けとか・・・」
しなくていいんですか?と彼に問いかけようとしたとき、唐突に唇が優しく降りてきた。
菜月は、急いで彼の身体を退かそうと、いまだに自分を押し倒しているシャンクスの胸板を押した。
でも、遅かった。
遅かったし、力ではかなわなかっただろう。
「ん・・・や・・・」
顔を背けようとしたが、シャンクスの片手が菜月の顔を捕えて、無理矢理の口づけが続いた。
声を出そうとした隙に、シャンクスの舌が侵入してきた。
深い口づけに戸惑う菜月。
脳裏にはキッドの顔が浮かんだ。
「んんっ・・・はぁ」
シャンクスの唇が、菜月の首筋に移ると、菜月は涙声で請う。
「シャ・・・ンクスさ・・・」
「ん?」
軽く聞き返されたが、菜月は、非常事態を告げた。
涙目で、何かを堪えるように口元を手で覆いながら、
「ごめ・・さ・・・」
「どうした?」
菜月の言いたいことはわかっているつもりだったシャンクス。
きっと、「やめてほしい」のだと。
でも、シャンクスとしては、止めてやるつもりは、これっぽっちもなかったのだが。
「・・・・・・・・・吐きそう、です」
「!!!」
流石に、この言葉を聞いてシャンクスは、ちゅっ、ちゅっと、厭らしく彼女の首筋に吸い付くのを止めて、まず菜月の表情を確認した。
ぎゅっと、閉じられた瞼。
微かに浮かぶ涙。
覆われた口、そして、視線を下げると喉元がコプリと動いた。
その瞬間、シャンクスは菜月を抱えてトイレへと急ぐのだった。