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彼と彼女の航海日誌

第3章 不信感


 「シャンクスさん、おはようございます」
 「ああ、菜月か。おはようさん」

起き抜けのシャンクスにコーヒーを持っていく菜月。
ドアのノックし、彼から返事をもらうと、ゆっくりその部屋に入室する。
こんな風に朝を迎えるのも、今日で最後かもしれない。
数回ほど見た寝起きのシャンクス。
今朝は、どこか違った雰囲気だ。

数日前に彼らに助けてもらってから、この船に乗せてもらっている。
ただ乗せてもらうのでは申し訳ないからと、菜月は自分にできることはないかと、自ら雑用を申し出て、それなら、シャンクスの世話を頼むと、船員全員の意見が一致して、今に至る。

初めは、夜の相手をしろと言われたのかと思ったが、自分が売られるわけではないと言う事、シャンクス達が、そこまで女性をひどく扱う人間ではないことがすぐに分かったから、

『元の世界で言うと、秘書、みたいな感じかな?』

菜月の中でそう結論が出た。
出来上がった料理を運んだり、身の回りの掃除をしたり、船員の連絡を伝えたりなど、仕事としては疲れることはない。
気を使っているのかもしれない。
また、警戒されているということもなくはなかった。

菜月は、まだ自分の名前しか打ち明けることはなかったから。
どこの島の人間で、何故ケモケモ島にいたのか。
そのあたりの事情は、まだ言えない。
更には、同業者であるキッドのことについては、言ってはいけない気がするのだ。

そう菜月のなかでくすぶっているのは、船員にも伝わっていたし、
船員にわかると言うことは、シャンクスたちにも当然感じている事。

いつも通りの朝を迎えた今日。
シャンクスが目を合わさずにコーヒーを飲む。
ああ、潮時なのだと菜月は覚った。

 「お前さんに、話があるんだ」

空になったコーヒーを受け取った。
ゴクリと、菜月は緊張を飲み込んだ。
何も話さない菜月に対して不信感をつのらせている船員がいるという。
このままでは、航海するうえで不都合が生じるだろう。
それまでに、少しでいいから、菜月の事を教えてほしいと、シャンクスは優しい口調で話してくれた。

菜月自身、助けてもらったうえ、どこの誰かもわからない人間を船に置かせてもらっているのだから、拒否することはできない。
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