第2章 対面
「・・・逆に、ナツがお尋ね者になる・・・なんてことは、ないよね?」
「・・・・・・・・・」
「ねぇ、キッドくん?」
「・・・・・・・・・」
冷や汗を流しながら、キッドはユージンを見る。
そして、ユージンもつつつーと頬に冷や汗が伝った。
「そんなに凶暴な女なのか?」
キラーがそう質問すれば、全然違うと二人は応える。
ならば、心配することもないだろうとキラーは咎めるが。
「ナツ・・・頭は悪くねぇはずだ・・・」
「うん、賢いんだ・・・いい意味でも悪い意味でも・・・そして、とても極端な子・・・自己犠牲もいとわない・・・」
悪い意味でも賢いとはどういう事か?とキラーは一瞬首をひねる。そしてユージンが続けるキーワードから、菜月という人物像を描き、彼なりに仮説を立ててみる。
自分を見つけてもらうにはどうすればいいか。
世間が自分に注目すればいい。
そのためにすることと言えば、手っ取り早いのは、新聞に載ることだ。
どういう理由で新聞に載るのか。
そこがキッドとユージンに不安を与える要因になっている。
「この世界に絵のコンテストがあって、ナツがそれに応募して、いい成績をのこして新聞に載るってのが理想的だね」
「・・・それよりも、楽で早く結果を出す方法があるぜ」
「言わないで、キッドくん・・・ボク、たぶんそうなると思うから、せめて・・・言わないで」
「・・・・・はぁ・・・」
ユージンが理想を語った。
確かに菜月向けのいい方法だ。
だが、時間がかかるのがデメリットだ。
それよりも、確実に早く新聞に載る方法があるとキッドが応えると、ユージンは聞きたくないというように自分で自分の耳を塞いでしまう。
その厄介で危険な方法を、彼女が選ばないことを彼らは祈るのみ。
『頼むから、無茶するなよ・・・ナツ・・・』
しかし、残念なことに、菜月はすでに動いているのだった。
助けてくれたのが海賊だと知ったら、キッドとユージンはひどく落胆するだろう。
それが現実となる日も、そんなに遠い未来の事ではなかった。