第18章 女神の創傷
『政宗』と言いかけて声にならず、引手に手をかけようとして、止める。
迷って、考えて、時間としてはかなり長い間、
政宗の部屋の前でオロオロしていた。
(もう、諦めようかな……)
弱気になって諦めようかというところに、
シュッ と襖が開いた。
「あ……」
言葉にならないまま引き入れられ、ぎゅっっと抱きしめられた。
「何やってんだ……
気配でお前だってわかんだよ。
それ位 想ってるのに、お前の事、
解ってやれなくてゴメンな……」
政宗は瑠璃を抱きしめて、顔を見せないままそう謝罪する。
「俺が行くべきなのに、お前が先に来るなんて、カッコ悪りぃ…」
バツの悪そうな、後悔してるような声で政宗が言うから、瑠璃は、辛くなった。
首だけ横に振る。
「政宗は悪くないです。
ごめんなさい…ごめんなさい、政宗」
朝の涙とは別の種類の涙。
「ごめんなさい…嫌いにならないで、政宗」
ギュッと政宗の袖を掴む。
瑠璃の1番の願い。
「これ位で嫌いになるわけないだろ。
だから、もっとお前を見せてくれ。
でないと、俺は……」
悔しそうに、
「光秀ほど、お前を解ってやれねぇ」
吐き出す、政宗の苦しく歯痒い胸の内。
「ごめんなさい、政宗。私の勝手で…」
(苦しめてしまった…悲しませてしまった…)
政宗の胸中を思って瑠璃はまた涙した。