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《イケメン戦国》未来から来たお姫様

第18章 女神の創傷



ー対峙ー

御殿に戻ると瑠璃は、振袖を脱ぎ、小袖に着替える。
そして鏡台に向う。

(ひどい顔……これなら……)
無表情の方がマシだと思った。

結い上げた髪をほどく。
抜いた蝶の一本挿しと櫛留めを見つめる。
買ってくれた時、『綺麗だろうな』と期待に満ちた瞳で笑いかけてくれた政宗を思い出す。
それなのに、自分の勝手で困らせて怒らせてしまった。

(いつもの癖で、素直に言わなかったから…)
自分を責める。
(ちゃんと言えば、政宗はいつだって解ってくれたのに……)
言えなかった。
(言葉にしても届かなかったあの人とは、あの時とは違うのに……)
そう思っても、無意識的に言葉を飲み込んでしまい、簡単に言えない。

結っていたため、ふわふわとカールしてしまう髪を、濡れ手縫いで落ち着かせ、つげ櫛で何度も梳かし撫で付ける。
その間に、心も落ち着ける。

嘆いても自分を責めても、後悔してもどうしようもない。

(政宗に会いに行かなくちゃ)

どうして、こう言う処は瑠璃はとても潔い。
清々しい程に真っ直ぐだ。
けれど、
女らしい処はやはりあって、政宗の部屋の前まで来たは良いが、襖の引手(ひきて)に手を伸ばしては引っ込める、を何度もしている。
どの位声を掛けようとして、息を飲んだか。


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