第14章 失ったもの
「……ヤナギ……」
私は呆然と立っていた。燃えて灰と化したと、諦めていたものが目の前にある。燃やす前に運んだのだろうか。
「花奏」
カカシが白い封筒を私に差し出す。
「お前宛だって。机の上にあったよ」
白い封筒には、私の名前が書かれていた。
カカシから封筒を受け取り、
封を破り便箋を取り出した。
震える手で、中身を見た。
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"花奏へ
家のものを全部運ぶのは困難だったため、大切なものだけ運びました。
あとは、俺の残したお金で買ってください。足りなかったら家を売り飛ばしてください。ごめんな、花奏。大事なものを壊して。
俺に偏見なく今まで
接してくれてありがとうな。
カカシと幸せにな。
ヤナギ"
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「ヤナギ……」
私は目が潤んでいた。
涙を我慢しようとしても、溢れて頬を伝い、ポタリと床に落とした。
「ごめん……、カカシ……」
カカシの肩に額を乗せて身を任せた。あふれ出す涙は我慢できなかった。
彼の人生は何だったんだろうか。どこかで助けることは出来なかったのだろうか……。私は……。私は彼の役に立てることは出来ていただろうか。
「花奏……、ヤナギはね、おまえと喋ってるとき、いつも楽しそうだったのよ。好きだったと思うよ、おまえのことがね」
私の身体を引き寄せたカカシの声は、自然と耳に入って心地いい。
「そうかな……?
分からなかったな……」
「おまえ、アレで分からないって相当だよ?」
「あはは……だね……」
涙目で笑った。私はきっと幸せ者なんだと思う。泣きたいときに肩を貸してくれる人がそばにいてくれるのだから。弱い姿を見せれる人がいるのだから。
カカシは、涙を流す私の背中を、
撫でてくれていた。
優しくて落ち着く
大きくてあたたかい手で。