モデルのボーダー隊員(前のストーリーとは少々異なります)
第20章 名前云々とお姫様(仮)
迅視点
眠ったシュウ...もとい明希を医務室に運び、今は明希の周りを囲むように座っている。
「あとは先輩が目覚めてくれればイッケンラクチャクですな」
遊真の言葉に全員が頷く。目覚めない限り安心は出来ない。医者によるとSEの不安定化、睡眠不足、それと栄養失調によって暫くは医務室で安静にしていないといけないらしい。
「とりあえず、影浦と菊地原は協力ありがとな」
「お礼に今度なにか奢ってください」
「元気になったら俺の家に来いって伝えとけ。美味いもん食わせてやる」
2人はそう言って部屋を去っていった。
菊地原は相変わらずだが、影浦が自ら店に呼ぶのは珍しい。相当明希を...と言うよりシュウを気に入ったらしい。
「そういえば太刀川さん。何で俺に明希を運ばせてくれなかったのさ。俺が運ぶって言ったのに」
「だってお前、寝不足気味だろ?お前の事だから藤咲が心配で探し回ってたか、1人残された気分でまた寝れなくなってたかのどっちかだな」
途端に玉狛メンバーだけでなく秀次達まで俺を見る。その顔には心配と不安が入り交じっていた。
「心配する程じゃないよ。それこそ明希程酷くないし、今はトリオン体だから大丈夫」
「精神的疲労でトリオン体でも倒れる事がある。万一運んでる途中で倒れられても困るだろうが」
そう言われてしまえば何も言い返せない。明希を腕から奪われた時に感じた寂しさが再び込み上げてきた。
玉狛への帰り道、後輩達から口々にもっと自分を大事にしろと説教された。心配だったのだから仕方ないとは言え、そのせいで太刀川さんに明希を取られるのは屈辱だったので何も言い返せない。
「迅は、明希の事どう思ってるわけ?」
「どうとは?」
小南の唐突な質問の意図が読めず聞き返す。
「そのまんまよ。あんた明希の事を超がつく程大事にしてるじゃない。侵攻の時のアレは別だけど」
「確かにそうっすね。迅さん、明希先輩の前だと凄く優しい顔になってますよ」
「...そんなに?」
「はい」
「なってるな」
「物凄く」
メガネ君達にもそう言われて、自分の気持ちというのが周りにバレていることに気付く。思わず口元を隠して顔が赤くなっているのを隠すが、おそらく全員に見えている。
こんなにも余裕のない自分は初めてだ。
どうしようか...