第17章 第13章の続き サソリさん
なかなか、
反論や態度を、サソリさんは示さない。
……ん? あれれ、いいの?
私がベタベタ甘えたり抱きつこうものなら大変だ。
邪険に扱われてしまう。そりゃあ酷いもんで。
「離れろ」って血管浮かせて落雷だ。
なによ、けちんぼ。
でも。
今日はいいのかな、不思議だ。
「……サソリさん?」
いいんですか?
「さっさと歩け。グズグズするな」
「は、はい!」
サソリさんは怒ってない。
いや、歩くスピードにはプンプンだけどね。
腕組みはいいの?
「いいんですか?」
「ああ」
「え!? あ、じゃあ……」
慣れないなあ、緊張しちゃう。
まあご厚意に甘えよう。
街で腕組みして歩いていると、サソリさんに目線が集まる。歩く女性がこちらを振り返る。サソリさんは格好いい。それは昔から。
紅色のサラサラな髪。透き通る瞳。
整った顔。15歳から変わらない姿。
今、小さく、「カップルかな」なんて通り過ぎた人から声が聞こえた。
嬉しいなあ。
残念、違うよ。
恋人みたいに見えるけど、見えるだけ。
手だって繋いでもらったことはない。
腕組みだって
無理矢理なんだよ。
「長いですよね……」
「あ? 何がだ、早く主語を言え。 まだ歩いて数分しか経ってねえぞ」
「そうじゃなくて」
アカデミーから続く
私の片想いの話ですよ。
サソリさんは忘れてますよね。
最初はたぶんね、私は恋に恋してたの。
サソリさんの外見だけが好きだった。
紅い髪に茶色の瞳。端正な顔立ち。長髪ならば、女性に間違えられてしまうぐらい綺麗なひと。目を奪われるって、こういうことだと思う。
アカデミーを卒業して、サソリさんと任務を遂行するようになる。話す機会が増えていった。
しばらくして、サソリさんは抜け忍になる。私も追いかけるように抜けて、暁に私も入る。
そこからサソリさんの中身を
知るようになった。
冷たい言い方だけども、どこか優しい。いつも私を助けて気にかけてくれる。そんなところに私は惹かれて、気がつけば、本当に好きになっていた。
今ではもう、他のひとが入る隙間なんてない。サソリさんだけを私は求めてる。身体に触れるところが熱くなる。今、私はたまらなく泣きそうだ。