第16章 ワールドトリガー 風間さん
「ぐ、ちゃぐちゃで、見た目ダメで、全然よくなくて……、ほら、さっき、太刀川さんや出水も言ってたじゃないですか。だから来年また作ります。そのとき、…………貰ってください」
「だせ。今すぐにだ」
え、ええ……。
有無を言わさない眼力。黒くて、まがまがしいオーラが見えてきそうだ。 小さい子が見たら泣くんじゃないかってぐらい、わたしを睨んでる。蛇に睨まれたカエルだ。
「か、かか風間さん。わわ、わわかりました。だだだ、だから睨まないで……」
わたしは自分の鞄を取った。
鞄のチャックを開ける。赤いチェックが見えた。
いや、ダメだって、これ。
ゴディ●のほうが100倍、見た目もいいし、美味しいし。頑張って作ったけど、みんなと差が歴然にあり過ぎる。やっぱやめ……
「それだ」
風間さんは、ひょいと奪い、
ビリビリと包装紙を破り始める。
「ちょ、ちょっと! だ、ダメですって風間さん!」
なんて言ったが、風間さんは止まらない。茶色の箱をパカっと開ける。アメーバーではなくヒトデ。宇宙人ではなく、どうにか人に見えるモノ。マシな形のハート。
ばりばり、チョコレートビスケットを
食べ始める。手紙を読んでいる。無言だ。
てか全員、こっちに注目している。
変な空気である。
「来年も作れ。分かったな」
ビシッと頭に、
風間さんから
チョップをいただいた。
「は、はい」
「うまい。変じゃない。 見た目なんか気にすんな」
最後の1枚を食べて、飲み込んだあと、わたしの目を見つめて風間さんが言う。
「来年からは花奏以外からは貰わねえ。覚えとけ」
「は、はい」
涙目で頷いたら、
頭をグシャグシャとされた。
「花奏のチョコはな、おれにとって、いちばん価値があるんだ。忘れんな」
はい。って言えずに、
目頭が熱くなり、下を向いた。
「泣くな。場所を考えろ」
風間さんは、やっぱり甘い。
「……は、はい」
わたしにハンカチを渡して、
頭を撫でてくれていた。
だから余計に涙が溢れた。