第18章 秘密が多い私達
朝食を済ませ、今日も歩いて仕事場へ向かう。
毎朝わたしも早く起きれば、毎朝秀一さんに会えるのだ。
今更そんなことに気付いて、頭の中はバカになったようにお花畑状態だ。
事務所に着いて、先程届いたメールに返信をして、いつも通りのんびり仕事に取り掛かった。
(仕事といっても、大してすることは無い)
例の依頼主と数度メールをやり取りして分かったことだが、対象となるお嬢さんの婚約者は長野県出身で、そちらにも出向いて実家のことも調べてきてほしいとのことで。
今朝は、秀一さんに“一人で十分”とは言ったけど、やっぱり車出してもらえばよかったかなー・・・なんて思い始める・・・
まあ今回は地方で尾行をする訳じゃないので電車やタクシーでも間に合いそうだが。
ラムのことで忙しい秀一さんを、遠くに借り出すのも悪いし。
気付けば昼前で。
おそらく、もう一時間程で零はここにやってくる。
彼にこの依頼の話をすれば、きっと一緒に行くと、飛びついてくるだろう。
話すべきかどうか、迷う。
それよりも、彼からどうやってラムの話を聞き出すかも、考えておかなくてはならない。
ストレートに聞いたところで、“教えて欲しいなら赤井の情報を渡せ”とか言われそうだし・・・
おまけに秀一さんの話になると、零はおっかない顔になるから、あまりその方向へ話は持っていきたくない。
色々思案している内にあっという間に時間は過ぎて。
来るであろう人物の為にお茶を準備していると、零はやってきた。
お茶を出し、テーブルを挟んで向かい合って食事をとる。
今日は煮込みハンバーグらしきものとバターライスを持ってきてくれて。
エラリーにはこんなメニューは無いので、わざわざ作ってくれたんだろう・・・
でもそれがめちゃくちゃ美味しくて。また零に作り方を聞いてしまった。
「ごちそうさま!・・・コーヒーでいい?」
「ああ、うん。ありがとう」
コーヒーをいれてテーブルに持っていくと、また隣に座るように促されて。
チラッと事務所の入口を見やると、あー、やっぱり・・・施錠されてる。
隣に座って一息つく。
「ねえ、零って」
「なんだ?」
「零は、いつまでポアロにいるつもりなの?その・・・組織絡みのことが決着したら、やっぱり辞めるよね?」