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エラリーの彼女【名探偵コナン】

第10章 彼らの秘密


「降谷くんはどう言ってた」


先日の零の話を覚えている限り正確に話す。
話し終えた零の人相が変わり、怖い思いもした、という所までだが。

秀一さんは、グラスに半分程残っていたバーボンを一気に飲み干した。
氷だけになったグラスに、また新たに液体を注ぎながら話し始める。


「あの時・・・スコッチは俺から逃げていたんだ。俺に殺せと命令が出ていることは、彼も知っていた筈だからな。彼を追い詰めた時、俺はスコッチに、自分の正体はFBI捜査官だと明かした。逃がしてやると提案もした。彼もそれに乗ってくれると思った」

「じゃあ、なんで」

「俺達しかいないと思っていた建物で、階段を駆け上がりコチラに近付いてくる足音が聞こえた」


秀一さんが額に手をあてて俯く。
表情は見えないが、声色はかなり心苦しそう・・・


「スコッチは、それが組織の誰かの足音だと、咄嗟に思ったんだろう・・・俺の・・・ここに入れていた銃を奪われて、彼は自決した。一瞬のことだった」

「まさかその階段を上がってきた人が・・・」

「そうだ。スコッチに引き金を引かせたのは、バーボンだ」

「そんなの・・・って・・・」

「当時はバーボンが公安の人間である確証もなかったし、その場は組織のライとして、命令通りスコッチを殺したように振る舞った」


遠くを見るような顔で、何も無い場所を見つめていた秀一さんが、こちらに視線を戻した。


「降谷くんには・・・言うなよ」

「言え、ないよ・・・」


零がこのことを知ったら、どう思うか。
取り乱して自暴自棄になって・・・どうなるかわかったもんじゃない。
・・・言える訳ない。言ってはいけない。


目頭が、熱くなってきて。
溜まった涙がひとすじ、頬へ流れ落ちた。


「おい・・・お前が泣くことじゃない」

「だって・・・辛すぎる」

「辛いのは俺だけで十分だ」

「秀一さん・・・」


優しく抱き寄せられて、背中を撫でてくれる。

わたしが「もう、いい」と言うまで、秀一さんはずっとそうしていてくれた。



「・・・今日はもう寝るか」

「一緒に寝てもいい?」

「勿論」


電気を消してベッドに横になり、おやすみ、とキスをする。

秀一さんの体温と、規則正しい吐息を感じながら、
昨日十分に寝れていないわたしはすぐに眠りについた。
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