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今日、君の笛をふきます

第2章 おとな



その後、有ちゃんは笑顔でボクと別れ、他の友達のいるテーブルへ移っていった。

同窓会はつつがなく進行し、一次会は終了。ホテル内のレストランでの二次会も、ボクは一応参加した。
結局何人もの人と話したけど、忘れられないヤツもいれば、こんな人いたっけ?という人もいた。
ボクを見てそう思った人もいるだろう。

そのうち二次会も終わり、「三次会以降は各自で」ということになった。

夜はまだこれからとばかりにワイワイとさわぐ元クラスメイトたち。
ボクはまあ、もう帰ろうかな。
ボクがいなくても誰も気にしないだろう、ということでこっそりと三次会集団から距離をとった。
すると、誰かがボクの手をつかんだ。

「帰っちゃうの?」

誰かと思ったら、有ちゃんだった。

「何か用事でもあるの?」
「いや、そういう訳じゃないけど」
「じゃあさ…」
有ちゃんはボクの耳に口を近づけ囁いた。



「これから、笛をふきに行かない?」



有ちゃんはニンマリと笑った。その顔は、ボクが小学生時代にずっと見つめていた笑顔とも、さっきまでお酒片手に童心に返っていた笑顔とも、全然違う、大人の女性の顔だった。

ああそうか。
有ちゃん。
大人になったんだね。

有ちゃんに強く握りしめられて、シルバーの指輪をつけたボクの左手がキリリと痛んだのだった。



おわり

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