• テキストサイズ
前へ しおりをはさむ 次へ

「標(しめ)結ひて」

第1章 嫉妬


気に入らねぇ。
教科書忘れたって、それ、嘘じゃねぇだろうな。
俺は前の席に座る、山崎の背中を睨みつけた。
は何の警戒もしていない顔で、山崎に教科書を見せてやっている。
見やすいようにって、席近付けるのは分かるけどよ、近すぎねぇか?
明らかにデレデレしてんじゃねぇか。あの野郎、ふざけんなよ。

次の体育の授業、久々に出席した俺は、ドッジボールを山崎の顔面に向けて投げ付けてやった。

「今日、図書委員の仕事で遅くなるから先帰っていいよ」
放課後、に言われて一瞬頷いたが、すぐに考え直した。
図書委員って…確か土方とだよな。あいつの事だ。遅くなったら「家まで送る」とか言いだしかねねぇ。それは…ムカつく。
「教室で待ってる」「いや悪いよ」というやり取りを何度かした後、結局はちょっと困ったように笑い、
「じゃあ、出来るだけ早く済ませるけど、本当、帰っちゃって良いからね」
と言い、土方と教室を出て行った。
2人が何か話している声が遠ざかる。
思わず漏れた舌打ちが聞きつけたのか、銀八がニヤニヤしながら俺の肩を叩いた。
「高杉ー。男の嫉妬は良くないぞー」
「うるせーな。そんなんじゃねーよ」
ただ、自分のモンに手出されそうなのが気に入らねぇだけだよ。

解説

「標(しめ)結ひてわが定めてし住吉(すみのえ)の浜の小松は後もわが松」
『彼女はもう私のモノですからね。住吉の浜の小松に標を結ぶように、将来を約束しているんだから。手を出しても無駄。これからはずっと私だけですからね/余将軍/万葉集』
前へ しおりをはさむ 次へ
/ 1ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp