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親友を取った男の部下に堕とされました

第1章 第七商社の鶴見


「それでね、ゆうは…聞いてる?」
「ん?うん」
下校中、いつものように弥作が一方的に話しているのを聞き流していると急に怒られたので生返事をする。中学に入ったあたりから、弥作は趣味の剥製作りに関して俺に聞かせては一人でアイデアをまとめていたので、今回もそれだと思っていたがどうやら違ったらしい。
「じゃあ僕が何の話してたか答えて?」
「……えーと」
「ほら聞いてないッ!最初から言うから今度こそ聞いててよ?」
「ごめんごめん、わかった」
「この間ね、ボクの工房に人が入ってて」
「…は!?あの俺ですら入れてくれない工房に!?」
「ボクが入れたわけじゃなくて、ボクが家に帰ったらそこにいたの」
「不法侵入じゃねーか。大丈夫だったのかよ?」
「うん。その人は鶴見さんって言って、第七商社の課長さんなんだけど、ボクの”作品”たちがすごいから、よかったら高校中途して第七商社に入らないかって」
「…………は?」
何だって?不法侵入者があの有名な第七商社の課長で?その場で高校入りたての弥作をスカウトしたって?わけがわからん。
「お前、それ絶対頭のオカシイやつだよ。大体不法侵入の時点で犯罪者だしさあ。それいつの話?通報はしたんだろうな」
「ゆうは……」
弥作の目が不意にサッと冷たくなる。やばい、何かはわからんが、地雷踏んだっぽい。
「鶴見さんはね、生まれて初めてボクの”作品”をよく出来てるって、カワイイカワイイって褒めてくれた人なの!ゆうはだって言ってくれなかったのに、鶴見さんは言ってくれたんだよ!」
「弥作…」
弥作の言う”作品”は、工房へ表立って飾ってある剥製とは違う、人の顔や体のパーツを模した衣服たちの事だった。カワイイかどうかは俺にはよく分からなかったけど、他でもない弥作が熱をあげてるものだし、技術がすごいのは分かったから、俺は「すごいな」としか言ってなかったんだ。それをそのツルミとやらはカワイイって?
俺以外の人間に懐いたことのない人嫌いの弥作をここまで骨抜きにするなんて、第七商社のツルミ課長……何者なんだよ。
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