第2章 その死神、労働
「そう言うあんたはどうなのよ?」
「何が?」
「自殺した理由よ。」
グレルにそう問われ、私は返事に困る。
「あー...私は、なんと言うか...人生に絶望してって感じ?」
「ふーん...でもあんた、悩みなんて無さそうに見えるけどね。」
「それグレルが言う?」
「なんですって!?」
「ごめんって(笑)」
デスサイズを振りかぶるグレルを宥めながら謝る。
「私はね...両親を殺されたの。悪魔に。ある人に助けられて、私だけ無傷。それでなんかもういいやってなって...橋から飛び降りて死んじゃったの。」
一瞬、グレルの目が驚いたように見開かれる。
「そう、悪魔に...あんたも大変だったのね。なんか、詮索して悪かったわ。」
「いいよ、別に。それに、今は十分第2の人生を楽しんでるから。」
「...ならまぁ、いいワ。さぁ、気を取り直して、次の回収に向かいましょ。」
「うん。」
その時、また、あの嫌な視線を感じた。
振り返ると当然そこには誰もいなかったが、胸に得体の知れない不安が広がってゆくのが分かった。
「ユキ?」
グレルの呼びかけにハッと我に返る。
「ごめん、なんでもない。」
きっと、気のせいだ。
そう思いつつも、あの嫌な気配を昔どこかで感じたことがあるような気がしてならなかった。
「グレル、あの...」
「なによ?」
「...ううん、やっぱいいや」
グレルにその事を言おうと思ったがやめた。
私の気のせいだったら仕事が遅れてしまう。
「さぁ、さっさと終わらせちゃいましョ。」
「...そうだね。」
不安を抱えながらも、私たちは次の回収作業へと向かった────