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ハリー・ポッターと龍宮の姫巫女

第18章 姫巫女と禁じられた森


「ハリー、傷が……」

 赤く腫れ上がり、傷口には邪気がまとわりついている。
 悪しき力に触れてしまったせいだろうか。
 紫扇で軽く仰ぎ、手早く邪気を払ってやると、痛みもだいぶマシになったようだ。

「さっきのヤツは何だったんだろう――……あ、それよりもユニコーンが……!」

 駆け出したハリーに続き、シオンもユニコーンの傍に膝をつく。

「死んでる……?」

「……あ、ううん! まだ、微かだけど息をしてるみたい!」

「でも、僕たちじゃ助けられないよ。魔法薬も持ってないし、傷を治すような呪文だって知らない」

 シオンは注意深くユニコーンを観察した。
 目の前で失われそうになっている命。絶対に諦めたくない。

 あの影のような者が吸いついていた脇腹には、ハリーの傷に纏わりついていたものとは比べものにならないほどの邪気が渦巻いている。
 かなり血を抜かれたのだろうか。のたうちまわったのもあるだろうが、失血性ショックに陥っているのかもしれない。

 もう長くはないだろう。本当なら、ここで命を終える苦しみから解放してあげるのが優しさかもしれないが……。

「待ってて、すぐに助けるから!」

「シオン?」

 ハリーが訝しげな緑の瞳を向けてくる。
 ユニコーンも、震える瞼を開いてシオンを見た。

 シオンは大きく息を吐き出し、そして吸い込む。
 頭の中を冷静に保ち、手早く薬師如来印を作った。


「……《薬師世尊に帰命し奉る》」


 雑念を払い、ユニコーンへ意識を集中させる。
 余計なことは考えなくていい。ただ、今目の前で失われそうになっている命に心を向ける。


「《瑠璃光の王、真実に至りて示す者、敬意を払われし者、宇宙の遍く全ての現象を知る者よ。四百四病をも癒す妙なる医薬、霊薬、偉大なる秘薬を此処に顕現し給え》――」


 あらゆる傷病を治す力を持つ御仏よ、消えゆく命に慈悲を――……。


 ガサガサと音を立てて人影が現れるが、シオンはただひたすら術に集中した。

* * *

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