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ハリー・ポッターと龍宮の姫巫女

第13章 姫巫女とクィディッチ


 騒ぎに紛れて教師たちのいるスタンドから去ったシオンは、頭の中で先ほどの感覚を思い出していた。

「シオン、何かあった? 少し様子が変よ?」

 先を走るハーマイオニーに、シオンは緩く首を振って、曖昧に笑って見せる。

「何でもないよ。何でも……ないから……」

 どう表現していいかも分からない。


 ただ、深淵を覗いたことで、深淵からこちらを覗かれたような、そんな感覚。


 観客席へ戻ると、ヒマワリが真っ先に気づく。

「シオンさま、ご無事で……」

「うん、大丈夫。何もないよ」

 微笑んでみせるが、彼女は心配そうに眉を下げた。

「ネビルくん、マリアちゃん。もう怖くありませんよ。大丈夫です」

 シャーロットが優しく二人に声を掛ける。
 この騒動が始まってから、ネビルもマリアも、ずっと互いの手を握り合って目をギュッと閉じていたのだ。

 すると突然、ハリーが急降下を始めた。

「ち、ちょっと! 全然大丈夫じゃないじゃない!」

 小さく悲鳴を上げて、マリアはネビルにしがみつく。
 しかし、ハリーが自分の意思で箒を進めたのだということはすぐに分かった。

 黄金のスニッチを見つけたのだ。

 地面すれすれまで降下したハリーがスニッチへ手を伸ばす――が、あと少しが届かないようだ。
 そこで何を思ったのか、彼は箒の柄に立ち上がり、再び手を伸ばした。

「ハリー……」

 シェリルがギュッと手すりを強く握り締める。
 やがて、ハリーが転がるようにして地面へ落ちた。


「「ハリー!」」


 シェリルが、ロンが、ハーマイオニーが、そしてシオンが。
 彼と親しい誰もがハリーの名を呼んだ。

 今にも飛び出しそうなシェリルの肩に、シャーロットが手を添えている。
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