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ハリー・ポッターと龍宮の姫巫女

第12章 姫巫女とトロール


「あれが……トロール……?」

 形相自体は鬼よりもずっと優しい。
 爪も牙も鋭くないし、異臭さえなければ恐ろしさは感じない。
 勝手に鬼のようなものかと思っていただけに、やや拍子抜けしてしまう。

 トロールはドアの前で立ち止まり、中をジッと見ていた。
 長い耳をピクつかせ、中身のない頭で考えていたようだが、やがて前屈みにノロノロと中に入っていく。

「あのドア、鍵穴に鍵がついたままだ。アイツを閉じ込められる」

 ハリーの言葉に、シオンとロンは頷いた。

「シオンはここにいて。僕とロンで行ってくる」

「でも……」

 自分だけここで待っているなんて、不公平だと思ったのだ。

『シオン、ここは二人に任せよ。三人で行ったところで意味はない』

 確かに、月映の言う通りだ。
 シオンが行ってもやることはない。

「普段、シオンには助けてもらってるからね」

「ここは、僕たちに任せて」

 トロールが出てこないように祈りながら、少女は二人の背中を見送った。

 開け放たれた二人はドアに恐る恐る近づき、ロンがドアをぴしゃりと閉め、ハリーが鍵を掛ける。

「やったぁ!」

 シオンが手を叩いて喜ぶと、二人も達成感から満面の笑みを浮かべて戻ってくる。
 しかし、二人の足音に被せるように悲鳴が上がった。


「きゃあぁぁあぁぁあぁぁぁ――――ッ!」


 耳を引き裂くような悲鳴には、明確な恐怖が混ざっている。

 一瞬だけ思考が停止し、何が起こっているのか分からなかった。
 そうして、ようやく理解する。
 今、トロールを閉じ込めた部屋が何だったのか。

「ま、まさか……⁉︎」

「しまった! 女子トイレだ!」

 シオンとハリーが叫ぶ。
 ロンも、まるでこの世の終わりのように青ざめた顔をした。

 女子トイレ……つまり、中には助けに来たはずのハーマイオニー・グレンジャーが入っていたのだ。
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