【YOI夢】ファインダー越しの君【男主&オタベック】
第3章 公私の国交
会場では賑やかな晩餐会が催されていていたが、オタベックは他の来客達と簡単な挨拶をした後は、ひとり夜風に当たっていた。
途中、何度か『彼』と話をしようかとも思ったが、大使同様ホストである彼の周りには常に人がいて、とても割り込める余地がなかったからだ。
ただでさえ口下手な上、他の招待客よりも随分年若いオタベックは、今ひとつ気の利いた言葉をかわせそうになく、このまま時間を潰すしかないかと半ばうんざりしていると、目の前にミネラルウォーターの入ったグラスを差し出された。
「ご気分でも優れませんか?」
「!」
口元に笑みを浮かべながら尋ねてきた守道に、オタベックは言葉に詰まってしまった。
こちらを見つめている守道に、益々頭の中でグルグルと考えが渦巻いていく。
すると、
「守道くん、良かったらオタベックくんの相手をしてくれないだろうか。本来、試合でモスクワに訪れていた彼を、私が無理矢理オジサンオバサン達のパーティーに同席させてしまったんだ」
その時、篠大使と上機嫌で談笑していたカザフの大使から声がかかり、守道は再度オタベックを見つめてきた。
「いえ、俺は今回試合を欠場したので…大使は、俺に気分転換をさせようと、連れてきてくれたのです」
「…何処かお加減が?」
「普通にしていれば平気だ…ゴホン、大丈夫です」
怪訝そうに問う守道に、オタベックは少しだけしどろもどろに返した。
一瞬だけ、守道の目が面白そうに見開かれた気がしたが、すぐに元の表情に戻る。
「守道、彼をゲストルームに案内して差し上げなさい。暫し身体を休めて頂こう。お前は彼についていると良い」
「判りました」
篠大使の言葉に守道は頷くと、「どうぞこちらへ」と先導するように歩き出す。
宴会の部屋を出て廊下を進む守道の後を、オタベックは慌ててついていく。
「待ってくれ!あの、貴方は…」
会場の賑やかさとは正反対の静まり返った廊下で、オタベックは守道の背に呼びかける。
その声に足を止めた守道は、暫しそのままでいたが、やがてポケットに手を入れながら首だけ振り返ると、
「そんな呆けた顔してないで、いいからさっさとついておいでよ」
あの日と同じ皮肉屋の視線が、オタベックを捉えてきた。