第16章 世間は狭い
「わっはっは! 紅郎さんと久しぶりに会えて嬉しいな!」
「お前は毎度出くわす度に技をかけてくんのをやめてくれ…」
バラエティ番組の収録で三毛縞と一緒になり、なんだかんだと収録を終えて、夜も互いに時間が空いてるということもあり、呑むことになった。あやには決まった時点でメールで送り、了承の返事と自分も友達と会うから帰りがおそくなるかもしれないと、来た。
「で、どこで呑むんだよ?」
「家がここから近いからそこでどうだ?」
「あ? そんな急に行って大丈夫なのかよ。家の人とかよ」
「んー…いても花音さんが引きこもってるくらいだな」
「かのんさん?」
「うちの奥さんだ! 最近仕事の締切が迫っていて書斎に引きこもってる」
「……お前、いつの間に結婚してたんだよ?」
三毛縞にまさか嫁さんがいるとは思わなかったが、本人は仕事中で部屋から出てこないから大丈夫だと笑っていた。とりあえず、飲む分の酒とつまみと材料も買って、三毛縞の家に向かった。三毛縞の家は一軒家だったが、普通の家よりでかかった。来てから気づいたが、何気に高級住宅街だった。
「たっだいまー!」
「お邪魔します」
三毛縞のでかい声は玄関に反響するだけで、誰かが出てくる気配はなかった。
「むぅ…この時間帯でこの状態だと…仕事に集中しているか終わって寝落ちしてるとみた!」
「お前、自分の嫁さんを労ってやれよ。在宅で仕事してんだろ?」
「俺はいつでも花音さんを労ってるぞ? まあ、大抵不発が多いがな」
この三毛縞と結婚した嫁さんがどんなのか気になる。恐らく並大抵の奴では務まらないような気がするし…
「俺のことより、紅郎さんは奥さんとどうなんだ? SNSでも紅郎さんは特に奥さん自慢が多いから気になってたんだ」
「は? そんなに自慢なんて…」
「無自覚なのか? オフの奥さんの料理の写真とか作った服のモデルの写真が多いぞ?」
たしかに、あやの手料理は美味いから撮ったし、最近作った服も着てくれるようになったから嬉しかったりもしたが……そこまで俺は自慢していただろうか?