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かぐや月

第7章 病は気から


「……38℃、高いね」
「マジか…」
「病院行けそう?」
「なんとか…」
「じゃあ、着替えていこう」
「……せっかくオフが重なったのにな」
「お仕事で忙しかったんだもの。身体も疲れてて当たり前だよ?」

 お互い仕事が休みの日、紅郎くんが風邪を引いた。いつも健康体のイメージはあるけど、さすがの人気アイドルとデザイナーの二足の草鞋を履いていたら疲れだって溜まるのは必然だ。
 車の運転なら私も出来るから、しんどいところ申し訳ないけど紅郎くんに服を一旦着替えてもらって一緒に病院に行って薬を処方してもらった。

「お家のことしてるから何かあったら呼んでね? 扉開けてるから」
「あぁ…悪ぃ…」
「お水、置いてるね」
「おぉ…」

 家に帰ってから、寝やすい服に着替えてもらって紅郎くんには寝室で休んでもらった。
 私は蓮巳くんに紅郎くんの風邪を知らせるだけしておいてから家事を片付け始めた。
 そう言えば、紅郎くんが風邪をひくなんて付き合い始めた頃の一度しか私は知らない。幼稚園から中学までは滅多に休むこともなかったし、風邪をひいたその時はたしか紅郎くんと会う約束をしていた前夜に風邪で会えなくなったと連絡をもらって、様子を見にいったなー。ちゃんとご飯食べてあったかくして寝てたから翌朝には回復してたけど念の為家でまったりしてたっけ。

「そろそろお昼の支度してようかな」

 掃除機と洗濯物を済ませて、お昼ご飯の支度をした。紅郎くんには卵がゆと蒸し鶏を作って、自分の分は簡単なチャーハンにした。

「紅郎くん?」

 様子を見に覗いてみると、今は寝ていた。部屋を出る前におでこにかけたタオルが落ちていて、私はタオルを拾ってから紅郎くんのおでこに手を当てた。まだ熱かった。寝顔は熱で苦しそう。汗もかいてるから新しいタオルで拭えるところを拭った。またタオルを冷やしてからおでこに乗せ直すと、次に起きた時に着替えられるように着替えをクローゼットから用意することにした。

「…あや?」
「ごめんね、起こしちゃった?」
「いや、大丈夫だ」

紅郎くんが起き上がって、着替えを持ってそばにいった。

「紅郎くん。そのままだと気持ち悪いでしょ? 着替えよう?」
「あぁ」
「じゃあ、着替えてる間にお粥用意してくるね」

着替えを渡して、部屋を出ようとしたら服の裾を握られて止められてしまった。
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