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ゆるやかな速度で

第6章 4.決断



「あれ?」

真剣に考えてみようと思ったけれど家にいるとモヤモヤとしてしまいそうで私は散歩に行ってくるねと告げて家を出て特にあてもなく散歩をしていた。
それなのに、気が付いたら結構家から離れた場所まで歩いてきてしまっていたようだった。

でもこの道は覚えがあった。
もう少し歩くと確か…と思い出しながら歩くとやっぱり思った通りで昔金太郎くんと出会った公園に辿り着いた。
休日の夕方だからなのだろうか?
何故か今日は公園には人がいなかった。

私は懐かしくなってあの砂場が見えるベンチに腰掛ける。
小学校の時は時間さえあればよく遊びに来たなと砂場を見て私は笑った。
金太郎くんだけでなく、遥斗も綾子ちゃんとも何度も遊んだ思い出の地は少しだけ遊具等が古くなっているだけで特に何の変わりもなくて何処か凄く安心した。

結局散歩をしてみても私は自分がどうしたいのか分からなかった。

「テニス部のマネージャー……か」

ポツリと呟いた言葉は誰に聞かれるわけでもなく消えていく。

家のことは気にするなと先程おばあちゃんには告げられた。
きっと西村さんも遥斗もおばあちゃんも私がやりたいと言えば応援してくれる事は分かっていた。
それでも私は言い出す事が出来なかった。
いつもなら何でも相談する綾子ちゃんにも何故か話すことが出来ずに昨日からモヤモヤとしていたのに、おばあちゃんは直ぐに見抜いてしまった。
流石だなと思う。
家のことを言い訳にしてやらないだなんて今までと何の変わりもないじゃないかと思った。

『私、変わりたいと思ってて』なんて白石くんに告げた癖にまだまだ変われてないんだなと自覚した。
直ぐに変わることなんて出来ない事は分かっていても、それでも少しも意識が変えられていない事に自己嫌悪した。

「変わりたいな…」

ポツリと呟いて消えていく言葉。
私はそう呟いてからボーッと砂場を見つめていた。
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