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ゆるやかな速度で

第5章 3.5.部室にて


「それにしても凄かったわね~」

バタンと自身の部室のロッカーを閉めながら小春がしみじみと今日の事を話し始めた。
それをユウジが小春の話に隣でめちゃくちゃ頷きながら聞いてるんやろうなと2人の光景を思い描きながら俺は部誌に何を書こうかと思案しとった。

「遠山くんやっけ?ちょっと幼い感じやけど将来有望そうやからな~。小春的にいい男ロックオーンって感じやもしれへんわ~」
「な、なんやて!!!小春、浮気かいな!!!」

小春とユウジが何時も通りの会話を繰り広げる部室で俺は椅子に座って部誌に先程話しに出た遠山くんの事を書こうと決めて何から書くべきかと考える。
遠山くんの事を考えると、放課後の正門での光景が脳裏に蘇る。
あれには驚いたなと1人苦笑する。

先生に頼まれた用事を片付けてから部活に向かうために昇降口から出た時に何人かの生徒がざわめいとったさかい何かあったんか?と耳を済ませれば聞こえてくる『【名字】さんやない?』という言葉に驚いて人々の視線の先を辿ればそこにいたのは、正門で見知らぬ生徒に抱きつかれとる【名前】やった。
始めに見た時は正直何かの間違いかと思ったぐらいや。

【名字】【名前】という女子生徒が男嫌いというか苦手であるということはこの四天宝寺中学では割と有名な話しやった。
整った顔立ちだけでも目立つというのに、基本的には男子生徒と会話しぃひん姿勢は中学校っちゅう場所では特に目立った。
噂っちゅうものは勝手に飛び交うもんで、色々な憶測を最初はよんだが、彼女と小学校が同じやった生徒が重い口を開いた事によりあまり彼女自身を責めるものは増えなかった。
彼女自身の性格も自身の容姿を笠に着る様な人柄ではなかったのも影響したんやろうなと思った。
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