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ゆるやかな速度で

第3章 2.不思議な人



私はその声に導かれるように、ゆっくりと閉じていた瞳を開く。
日差しが眩しいのと寝起きで上手く焦点が合わなくて、ぼんやりとしか視界が分からない。
それでも先程までの夢の中でない事は直ぐに分かった。
そして私を心配そうに覗き込む様に誰かがいるのだけはシルエットで分かる。

「…誰?」

ポツリと呟く様に私がそう言うと、私を起こそうとしてくれた相手がホッとした吐息が漏れたのがわかった。

「うなされとったから、起こしてしもうたけど大丈夫やった?」
「……白石くん?」
「あぁ、せやで」
「……白石くん!!!?」

驚いて勢いよく飛び起きると、私を覗き込む様にしていた白石くんとぶつかってしまい、自ら白石くんの胸元に飛び込む様な形になってしまう。

「ご、ごめんなさい」
「俺は大丈夫やから。むしろ急に起き上がると危ないで?」

白石くんは、私を支えながら私の上半身をきちんと起こしてくれる。
それがまた、申し訳無さと恥ずかしさで私はどうして良いか分からなくなってしまう。
寝起きで頭がぼんやりしていたが、今私は白石くんに支えられているという事実にどうして良いか分からない。

どうしてこの部屋にいるのか
なんで私の隣にいたのか
なんで私を起こしてくれたのか
いつからいたのか

聞きたいことはたくさんあったが、上手く言葉に出せず、うっ、あっ、と言葉にならない声が私の口から漏れるだけだった。

「あ、触ったりしてしもうて、ごめんな」
「…あ、そ、その…大丈夫です……むしろ…起こしてくれて、ありがとうございます」

私がゆっくりと喋りながらお礼をいうと、白石くんは少しだけ寂しそうな表情をして私を見た。
そして何故この部屋にいたのか経緯を話してくれた。

「遥斗がな、お昼はたこ焼きたくさん焼いて【名字】さんを驚かすって張り切っててな。【名字】さんが起きたら居間に呼んで欲しいって言われてここで待っとったんや」
「そ…そうだったんですね…。ありがとうございます」
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