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ハツコイー5年後

第1章 たまには昔の話をしようか


高杉晋助の回想

中学3年の時から使っていたシャープペンシルがある。特に高価な物だったわけじゃねぇが、なんとなく、ペンケースを開けるとまずそれを選ぶ癖がつき、高校受験の日もそのペンを使い、銀魂高校に入学してからもずっと使っていた。
ある日、そのペンを無くした。
ペンケースにも無く、机の引き出しやカバンの中も探したが見当たらなかった。
もちろん他のペンでも字は書けるから、困りはしねぇが、手に馴染んでいたペンが無いのはどうにも落ち着かなかった。
しばらくして、衣替えの時、制服と一緒に出て来たペンを見つけた時は、自分でもおかしいくらいホッとしたのを覚えている。

3年になって初めて同じクラスになった、左斜め前の席に座るを見た時、なぜかあのペンの事が浮かんだ。
ずっと探していたモノを見つけた時の事を。

山崎退の回想

さんと隣の席になった時は、正直かなり嬉しかった。
普通に可愛いし、僕みたいなタイプにも優しいし、スタイルも…良いし。
教科書を忘れて見せてもらった時は、近づいたさんの髪からする甘い匂いに、授業どころじゃなかった。
それと、真後ろから感じる痛いくらいの視線に。
そう、彼が、高杉君がさんに対して特別な感情を持っているだろう事は、割と早くから気がついていた。何故なら僕同様、さんから言われる「おはよう」や回されるプリントに、少し声のトーンが上がるからだ。
ずいぶん手強い恋敵に、僕はすっかり尻込みしてしまい、隣の席に座るクラスメイトという立ち位置から動けないままでいた。
本当に情けない。
心の底からそう思ったのは、あの日、夏休みも終わりに近い日に行われた、流星群の観察の時だ。
久しぶりに会うさんに話しかけたくて、タイミングを図っていた僕は、皆が星空に夢中になっていた隙を狙い、近付こうとした。
そんな僕より数秒先に、彼が動いて…。
僕が見ているのを分かっていて、さんにキスをした。
その後2人の小指が絡むのを見て、僕は自分の負けを思い知ったってわけだ。
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