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【短編集】ブーゲンビリア【R18】

第5章 不良


「じゃあ、私は帰るね。今日は、お父さんもお母さんも仕事で帰って来れないらしくて、なんかご飯考えないといけないからさ」
「っ! それ!」
 鞄を持って立ち上がると、正面で慌てて立ち上がる信也の姿が見えた。
「? どうしたの? そんなに慌てて」
「……」
 頭をポリポリと掻きながら、何か言いたげな信也に、私は首を傾げる。そういえば、こんな顔、最近はよくするなぁ。
「……冷凍でいいから。ちょっと、寄る所があるから、九時ぐらいに、届けて欲しい……俺も、飯、考えてないから……」
「わかった! 何かリクエストあったら、LiME送っといてー」
「ん」
 手を振り、別れる。
 スーパーに寄って、何を買おう。信也が好きな、半熟卵のデミグラスオムライスでも作る? んー、冷蔵庫の中に何があったか忘れちゃったなぁ。
 そんな事を考えながら校門を出る。すると、突然、目の前に六人の他校の人が道を塞いだ。いかにも不良って感じの、ガラが悪い連中。関わりたくないけれど、たぶん、用事は私なんだろうな。
 スマホを取り出し、警察を呼ぼう、と番号を入力しようとした瞬間、スマホが手からスッと抜き取られ、両手を別々の男に掴まれた。手馴れてる……。これは、ちょっと、ヤバイかも。
「ちょっといいかな? 君、名前は?」
「……手首を離して、スマホを返してくれたら、言いますよ」
 あくまで強気に。そうしないと、震えてしまいそう。奥歯を噛み締め、思考を働かせ、恐怖を誤魔化す。巻き込んではいけない。巻き込みたくない。周りに人も居ない。スマホを奪い返して……どうやって? 走って逃げて……どうやって? 家バレしないように遠回りして……どこを?
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