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【短編集】ブーゲンビリア【R18】

第5章 不良


 若干、体温が上がってしまう。そう、私は、この幼馴染に片思いしている。自覚したのは、中学一年の時。私が、右折車が居ない事を確認してから、横断歩道を横断していたのだが、ウィンカーを付けず、結構なスピードで右折した車に撥ねられそうになった事がある。その時に、私を抱え込むように飛びつき、勢いで地面を転がって助けてくれたのが、信也だった。アスファルトを転がって、体中に傷を作りながら、守ってくれたのが、嬉しくて、申し訳なくて。轢かれそうになったのが、怖いはずなのに、暖かい腕の中が心地よくて。
 それ以来、意識をするようになった。また、触れられたい。抱きしめて欲しい。
「なんで学校に来ないの?」
「……内緒」
 そう言って、苦しそうに笑うのが、苦しくて、辛い。どうして、教えてくれないんだろう。昔は一緒に登下校してくれているのに、今はしてくれなくて。寂しい。この気持ちを素直に言ったら、またしてくれるだろうか。なんて、馬鹿なことを考えている自分が、恥ずかしい。
「そういえば……」
 声をかけられて、顔を上げると、目が合う。それだけで、胸が熱い。
「期末テスト、学年トップおめでとう。奏」
 そう言って、頭を撫でてくれるから、また頑張ろうと思ってしまう。実に単純な生き物だな。
「そういう信也は、2位おめでとう」
「ありがとう」
 そう言って、笑いあえるこの時間が、堪らなく、大好きだ。
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