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【短編集】ブーゲンビリア【R18】

第2章 罠


「は?」

何とも間抜けな声が出た。

「だから、旦那様は屋敷に着くなりここにいらして、”奏を守ってくれて本当にありがとう”ってお前が目を覚ますまでずーっと言われてたんだよ」
「それ……で……?」
「執事としては頭を下げ続けるしかないだろう」

ということは当然、信也をクビにするわけもなく。
早とちり、という奴である。
恥ずかしくなってきたが、信也の表情が曇った。

「信也?」

首を傾げて名前を呼ぶ。

「ごめん」

一呼吸おいて、信也は続けた。

「お前を本当の意味で守ってやれなかった。俺はっ! 俺は……何も、出来なかった……」

本当は今すぐにでも会社を潰したい。
殴り飛ばしたい。
でも、そんな事をすれば、奏の私生活に支障が確実に出る。
そんな事、するわけにはいかない。
信也にはただ謝る事しか出来なかった。
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