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【短編集】ブーゲンビリア【R18】

第2章 罠


「……い……」
「……は……もう……ん」

話し声が聞こえてゆっくりと目を開ける。
見慣れた天井。自分の部屋だ。
一体いつ戻ってきたのだろう。
虚ろな目のまま、体を起こした。
目の前には頭を下げた信也と父の姿。
目を見開き飛び起きる。
このままでは、信也がクビにされてしまう。
そう、思った。

「お父様! 葛城は何も悪くないのです!!」

その声に頭を上げた信也と目が合う。
信也の表情に戸惑った。
執事の顔じゃない。信也自身のホッとしたような悲しんでいるような何とも言えない笑みだった。
本人は恐らく執事の顔をしているつもりなのだろう。
それでいつもみたいに笑っているつもりなのだ。執事として。

――ああ……

この人は……私の事を……

――本当に、心から……心配してくれたんだ――

なら、自分のすることは、するべき事は1つしかない。
主人として、桐生奏として、一人の女として。
胸を張り背筋を伸ばし顎を引いて、前を見据えた。
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