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平凡で平穏で。

第1章 変わらずに


「…寒っ」

教室の最後列から2列目、窓側の席
窓から入る冷たい風が頬に当たって思わず言葉を漏らした
基本寝ていてもバレない席だがこういう時は損する
授業の邪魔にならない様ゆっくりと窓の方を向いた
外でヒラヒラと舞っている紅い楓に目を奪われ、掴み取りたくなるが絶対に無理なのでやめておく
そーっと窓を閉めて目線をもう一度黒板に移すと先生と目が合った
唐突だが私は数学の授業は嫌いだ
なんなら全教科嫌いだが1番嫌いだ
何故なら

「じゃあー芳川さん この問題解いてみて」

絶対に指名を食らうから
この時間、奏と私は確実に指名を食らう
そして範囲ではない難しい問題を解けさせられる
高3の範囲なんて勉強してる筈ないだろう
気色悪い先生だよな 本当に

「…はい」

重たい腰を上げて黒板前に移動する
書かれた問題式を見てみるとやっぱり範囲外でイラッとする
白チョークをとって計算式を書いていく
文字がぐにゃりと歪んだ
書きずらい
ニヤニヤしている先生を横目にまた席に戻る
すると私の斜め後ろの席にいる奏がクスッと笑った
答えを催促する眼差しを送ると先生が不服そうに声を上げた

「…正解 つまんないのー」

言い方に少し腹が立って握り直したシャープペンの芯をバキッと折る
それに驚いて隣の席の奴がこちらを見た
それをガン無視して先生を睨みつける
すると怯えたように肩を竦めて今度は高2の範囲の式を書き出した
はぁ… チャイムよ 早く鳴れ









「…優香。お疲れ様。」

「奏笑ったでしょ」

「面白かったからな。」

「次は奏が当てられる番だよ」

「どんな問題が来るんだろうか。」

楽しみだというふうにニンマリ笑う奏
余裕の表情に私も釣られて笑う
漸く授業が終わり休み時間
労りに来たのか煽りに来たのか分からない彼はいつも通りだ
移動教室以外の休憩時間は基本奏といる為誰も話しかけてこない
渚の視線は痛い程感じるが慣れっこだ

「あー、次の授業面倒臭い」

奏の机に倒れ込み文句を漏らす
手をバタバタさせると白い手袋に止められた

「なんでも面倒臭いんだな。」

「だって授業面白くないもん」

休み時間しか楽しい時間が無いのだよ
ブーブー言いながらまた手をバタバタする
よくそれで学年2位を…。と言われるがそれには答えずに頬を膨らませた
学年1位には言われたくない
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